大量の洗濯物を無理に詰め込みすぎたのが原因か、洗濯機がいつもより長く回っている。すすぎと脱水を何度も繰り返していて終わる気がしない。なんか異音もする気がする。
さすがに怖くなったので一時停止ボタンを押して回転を止め、蓋を開けて中身を確認してみる。やはり内容物が多いためにいつもより時間がかかっているだけ...のように見える。少しだけ洗濯物の偏りを整えたあともう一度ボタンを押して、洗濯を再開させた。
こういう時、どんと構えてゲームでもしながら待っていればいいのだが、余計なことを考えては洗濯機の前をウロウロとしてしまう。もし洗濯物を詰め込みすぎたのが原因で洗濯機が壊れていたらどうしよう。もし、おれが変なタイミングで一時停止ボタンを押したせいで、システムがすすぎと脱水を無限に繰り返す、無限ループのくぼみのようなところに落ちていたらどうしよう....。
そんなことが起きている可能性は限りなく低いが、かなり”ある”ラインだとも思う。そして大概、大損するときはこういう意味不明なエラーが自分の認知できないところでゆっくりと進行していた結果だったりする。このまま放置して寝た結果、洗濯機の中で無限に洗濯物が湿り、渇き、湿りを繰り返し、来月には法外な額の水道代を請求される未来が起こるのではないかと怯えてしまう。
プールの栓の締め忘れで小学校教諭に××××万円請求！みたいなニュースを見るたびに、他人事だと思えず怖気がする。
「自分の気づかないところで少しずつ損が発生していて、いずれ表面化し大爆発する」という破滅のかたちに対し異常なまでの恐怖がある。例えばサブスクがひっそりと値上げしていても気がつけないと思うし、多分こういうのが原因でおれは破滅するんだろうな、と思う。
例えば今ネットフリックスを月1500円ほどで利用しているが、ネットフリックス側の気が狂い来月から月100万円になってもおかしくはない。何らかの方法で通知はされるだろうが、気づかない可能性も大いにある。もし月100万円も請求される事態になったらさすがにクレジットカードが止まるだろうが、もしこれが月10万円だったら、月1万円だったらどうだろう。月1万円ぐらいなら気がつかないで数か月払い続けてしまうような気もする。その結果ゆるやかに生活が破滅していき、破滅の瞬間に気がつくのだろう。ワンピース（実写版）を見ている場合ではなかった、サンクチュアリ（聖域）を見ている場合ではなかった.......
多分、こういう凡ミスを防ぐために人はなるべく集まって過ごすのだろうな。もし4人の家族が暮らす家だったら、洗濯機が無限に稼働していても誰かが気づく。何かがゆっくりと崩壊していくさまは一人でいると気づけない。
たいてい静かになめらかに日常は壊れていくので、その小さな違和感に気づくためにはこちらも人海戦術を採ったうえで目を皿にして日々を過ごすしかない。そういう意味でも孤独であることはリスクだと思う。毎日を一人で過ごし一人で問題を解決している現状は当然かなり楽で居心地が良いのだが、ゆるやかに来る破滅に対してはめっぽう不利かもしれない。毎日少しずつでも無理して人とコミュニケーションを取らないといけないのか！？かなりいやだが、その緊張感が救う損失がきっとあるのか....
そんなことを考えていると洗濯が終わった。
窓を少しだけ開けたままにして、換気をしながら洗濯物を干したが、
「窓を閉め忘れた結果、家の中に無限にアリが入ってきたらどうしよう...」とずっと考えていた。助けてください。
