2024/04/22 右見て味を見て

一般に悩みを抱える人に対し「そんなの皆そうなんだから...」と諭すのは禁句だとされているが、自分は結構それで救われるところがある。自分の悩み事がいかに陳腐で、そこら中に転がっているような些細なことであるかというのを教えてもらえるのはありがたい。というか本当に、気を抜くと「他人もそれぞれ大小悩み事を抱えている」という当たり前のことがすっぽりと抜け落ちてしまうのだ。とにかく他人がおれに発する情報って自分自身がおれに発する情報よりも少なすぎる。だから都度都度で教えて欲しい。おれが感じているようなネガの気持ちをあなたも感じているし地球に乗っかっている全人類も常に感じているということがおれに伝わる機会がもっとあってほしい。

 

↑何様?

 

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スープカレーに納豆を入れるやつ、見事に大失敗した。まずそもそも、スープカレー自体を大失敗した。いつもと違う大きな鍋で作ったせいで火加減がうまく調整できず、にんにくと生姜が焦げてしまった。多少の焦げなら大丈夫だと思いGOを出しそのまま調理を続けたが、全然大丈夫ではなかった。最初、鍋底にこびり付いた小さな焦げたちはなにも悪さをしなかった。トマトジュースと共に攪拌されても、ココナッツミルクと共に攪拌されてもビクともせずにただ耐えていた。工程の最後、ひと煮立ちさせようと火を強め沸騰させた瞬間、ぶわっと鍋底の焦げが浮かび上がり全体に広がった。突如カレーの表面にまだら模様の黒点が浮かび上がり、NASAが提供している太陽表面の接写画像の様相を呈した。そして完全に終わった。もうどうにもならない。不可逆。帰還不能点。point of no return。辛くなり過ぎたとか甘くなり過ぎたとか味が濃いだとか薄いだとかそういう次元ではない地点に突入した。ただ、おれはカレーがカレーとしての灯を終わらせたことに気づいていなかった。味見を一切しないというプレースタイルがそうさせていた。カレーの表面に黒いカスが大量に浮かびおよそ普通ではない焦げ臭い匂いが鍋から立ち上がろうとおれは玉ねぎのメイラード反応が正しく作用し正しくそうさせていると心の底から信じ切っていた。そしてそのまま一切の躊躇なく納豆を入れた。完全に終わっているカレーに納豆を入れたのでその終わりはうねりを伴いながらずんずんと終わった。納豆を投入されたカレーは激臭を発し出し言うなれば終わりを超えた「超・終了」になった。流石のおれも超終了になったことには気づいた。そして確認作業だけが残った。終わったカレーが本当に終わったのかどうか、結果は分かり切っていたが一口食べた。完全に終わっていた。一旦座った。

1時間ぐらい座ったあと処理をした。大鍋を全部ざるにあけて濾し、具だけを取り出した。そのまま、軽く水道水で洗った。ひきわりの納豆はざるの目をすり抜けてほとんど流れ落ち、旨味の抜け出たスカスカの肉と野菜のみが残った。それを余ったトマトジュースとコンソメで再度煮込み、トマト煮にした。旨味は一切なかったが、食べれた。

 

教訓:味見はしよう!